悪意の遺棄による離婚。その時の慰謝料は?離婚理由にならない場合もあります!

夫婦によって離婚理由は様々ですが、その中の一つに悪意の遺棄というものがあります。

婚姻関係にある夫婦には3つの義務があり、悪意の遺棄とはこの義務に違反した場合の離婚の原因になる行いのことです。

悪意とはわざと夫婦関係を破綻させようと考えていたり、夫婦関係が破綻すると分かっていながらという意味で、遺棄とは正当な理由もなく夫婦の義務を怠ること、配偶者を見捨てることを言います。

実は悪意の遺棄で離婚する夫婦はそこまで多くありません。しかし、相手の行為が悪意の遺棄とまではいかなくても『婚姻を継続し難い重大な事由』として認められ離婚が成立した夫婦はたくさんいます。

悪意の遺棄として認められた判例や悪意の遺棄が離婚理由になった場合の慰謝料、また悪意の遺棄と認めさせるために必要なことをまとめました。

夫婦間の3つの義務

民法では「夫婦は同居し、お互いに協力、扶助し合わなければならない」と定めています。

1、同居義務
夫婦は一緒に住むことが義務付けられています。しかし、これは絶対に一緒に暮らさなくてはいけないというわけではありません。仕事での出張や単身赴任、夫婦関係を見直すための別居、子供の教育上必要な別居、治療や出産のための別居など夫婦が合意して別居してる場合は義務に違反したことにはなりません。正当な理由がないのに同居を拒否するとこの義務に違反したことになります。

2、協力義務
夫婦はともに協力して生活をしなくてはいけません。結婚生活の責任をすべて相手に押し付けるようなことはしてはいけません。協力しあって家事や育児をしたり、生活費をきちんと渡すなど、夫婦が一緒に結婚生活を継続する努力をしていく必要があります。

3、扶助義務
夫婦のどちらかが助けを必要とする状態になった場合、もう片方にはそれを援助する義務があります。
見捨てたり、ひどい扱いをせず、互いに助け合わなくてはいけません。
例えば、妻が病気や怪我をして働けなくなったら、妻は夫に夫と同じレベルの生活ができるくらいの費用を請求することができます。

悪意の遺棄に当たる行為

  • 配偶者に生活費を渡さない
  • 理由もなく同居を拒否する
  • 頻繁に家出を繰り返す
  • 必要ないのにアパートで一人暮らしをする
  • 暴力や嫌がらせによって、配偶者を家から追い出す。家から出て行くように仕向ける
  • 浮気相手の家で生活している
  • 生活費は送ってくるが浮気相手の家で生活している
  • 姑との関係が悪く、実家に戻ったまま帰ってこない
  • 単身赴任先から生活費を送ってこない
  • 働ける状態なのに働こうとしない
  • どちらかが家事を放棄して手伝おうとしない

上記の例を見てもらうとお金と同居に関することが多いことが分かります。

女性は結婚を機に仕事を辞める人も多いので収入がなくなります。この場合に夫が妻に生活費を渡さないと妻は生活できなくなるのでこの行為は悪意の遺棄に該当します。

また、心も体も健康なのに働かない夫は協力義務に違反しているので悪意の遺棄になる可能性もありますが、現在は主夫として働いている男性も多いので絶対というわけではありません。

特に家事をするわけでもなく、生活が苦しいのに協力しようとしないのは悪意の遺棄に該当するでしょう。

同居に関してもいくつかあります。配偶者が浮気相手と暮らしていたり、さらに生活費も渡さないとなれば最悪です。

また、愛人がいるわけではないけど配偶者がアパートを借りて一人暮らしをしている場合もあります。

この場合も同居義務に違反しているので悪意の遺棄とみなされるでしょう。

悪意の遺棄の判例

DV夫から逃げた妻の判例

夫からDVを受けている妻がいました。ある日妻が子供を連れて家を出ました。

夫は妻が出て行ったことに対し悪意の遺棄であると離婚を請求しました。

しかし、妻が夫に暴力を振るわれていたことや力ずくで家を出るように仕向けられたことを訴えたため夫の請求は認められませんでした。

逆に夫が妻を追い出そうとしたことが離婚の原因であると判断されたため、妻が出て行ったことは仕方のないことととして、夫ではなく妻からの悪意の遺棄に基づく離婚請求が認められました。

障害を持った妻を置いて家を出て行った夫の判例

結婚後に半身不随になってしまった妻を置いて長期間家を空けた夫がいました。

その間、夫は妻の面倒を見ることはなく、生活費すら送りませんでした。

これに対し、妻が離婚請求をしました。夫の行為は3つの義務すべてに違反しています。

夫は妻が一人で生活するのが困難であると分かっていながら一切援助をしませんでした。

これはかなり悪質だと言え、悪意の遺棄とみなされて当然でしょう。

夫が忙しく家を開けることが多かった夫婦の判例

これは悪意の遺棄が認められなかった判例です。

夫は仕事が忙しく、出張や仕事での外泊のために何日も家を開けることが多かったそうで、妻が離婚請求をしました。

夫は浮気をしていたり、全く帰ってこなかったわけではなく、月に数回は帰宅していましたが、生活費は渡していませんでした。

夫は同居義務、協力義務、扶助義務に違反しているとされましたが、その理由が仕事であったことや月に数回は帰宅していたこと、また生活していけるだけの十分な収入が妻にあったことなどから悪意の遺棄とは認められませんでした。

しかし、婚姻を継続し難い重大な事由として離婚が認められました。

悪意の遺棄で請求できる慰謝料と慰謝料を請求するための証拠

悪意の遺棄により離婚する場合の慰謝料は50万〜300万円が相場だと言われています。

その幅は配偶者が同居義務、協力義務、扶助義務に違反したことでもう一方がどれだけの苦痛を味わったのか、別居に至った経緯、生活費を入れない理由や生活態度などによって変わってきます。

最初に悪意の遺棄で離婚する夫婦はそんなに多くないと書きましたが、その理由は悪意の遺棄であるということが証明しづらいからではないかと思います。

悪意の遺棄であることを証明するためには証拠を集めておくことが大切です。

●同居義務に違反したという証拠
夫婦で話し合いをした場合は同居を拒否していることがわかる会話を録音しておくといいでしょう。
こちらが説得しているのにそれに応じなかった場合は悪意の遺棄として認めてもらいやすくなります。
相手が突然出て行った場合は、その時に残してあったメモや手紙、メールなどをとっておきます。
別居していると証明できる住民票や賃貸契約書もあるといいでしょう。

●協力義務に違反したという証拠
お給料をもらっているにもかかわらず生活費を入れないことを証明する必要があります。
源泉徴収票やお給料の明細書、家計簿などがあるとどれだけ生活費を入れてくれなかったかが分かります。
配偶者の浪費がひどかったり借金をしている場合にはクレジットカードの明細書や金融会社でお金を借りた明細書、多額のお金を引き出した通帳のコピー、購入したものの写真などがあると証拠になります。

●扶助義務に違反したという証拠
どのような生活をしていたのかということを証明します。
家事をしない配偶者であれば散らかった家の写真や、家事をしないことを知っている周りの人の証言などを集めておきます。
また配偶者に助けてもらえなかったことや配偶者の援助がないために不便な生活をしていることなどを書いた日記も有効です。

まとめ

配偶者の行為が悪意の遺棄までにはならなくても、婚姻を継続し難い重大な事由として認められ離婚に至る夫婦はたくさんいます。

悪意の遺棄は言葉だけでは伝わらなくても証拠があれば認めてもらうことができ、慰謝料も請求できますが、浮気やDVが原因であった場合も慰謝料は請求できるし、相場は離婚理由によって変わってきます。

悪意の遺棄であると自分で判断できない場合は弁護士さんに相談することも大切ですし、悪意の遺棄にならない場合は相手の行為が婚姻を継続し難い重大な事由であることを認めてもらわなくてはいけません。

その内容によって慰謝料が変わってくるので悪意の遺棄として請求するのではなく、他の離婚理由も考慮して請求した方が高額な慰謝料がもらえるのではないかと思います。

 

こちらの記事もご覧下さい。⇒精神的DVが原因で離婚。慰謝料の相場はいくら?離婚後でも請求することが可能!