夫婦が離婚する際に未成年の子供がいた場合、どちらかが親権者(監護親)になり、もう片方は非監護親になります。
しかし子供にとっては離婚しても、離れて暮らしても親であることに変わりありません。
子供が成長するまでにはたくさんのお金がかかります。この時にかかるお金を養育費といい、非監護親にも養育費の支払いが義務付けられています。
また、離婚理由と親権が関係ないように、養育費と離婚理由も関係ありません。
妻の浮気が原因で離婚しても妻が親権者になり、夫が養育費を払わなくてはいけない可能性は十分にあります。
養育費は何に使うの?
養育費は基本的に子供が成人する月まで支払われます。7月生まれの子供なら20歳の誕生日を迎える年の7月まで毎月支払われます。
養育費には様々な費用が含まれています。
子供が小さいうちに離婚したのであればオムツ代やミルク代もかかります。
大きくなると塾の費用や学費もかかります。大学には行かない場合は高校卒業とともに養育費の支払いが終わることもありますし、大学、大学院と進学する場合には養育費の支払い期間を延長することもできます。
ただ、養育費は何にいくら使うかを計算されて決められるわけではなく、夫と妻、それぞれの収入を考慮して計算されるものなので、監護親はもらった養育費の中から何に使うかを自分で割りふります。
非監護親から毎月きちんと養育費が支払われていたのにそれを監護親が無駄遣いしてしまって子供を学校に行かせられなくなった、だから子供のために養育費を増やしてほしいというのはできません。
非監護親に子供のために養育費を支払うという責任があるように、監護親にもそれを子供のために上手に使うという責任があるのです。
養育費の相場
養育費は夫と妻の収入によって決められますが、子供の年齢や人数にってもその金額は変わってきます。
裁判所のホームページに養育費の月額が分かる票がありますのでご覧ください⇒養育費・婚姻費用算定表
例えば年収500万円の夫、年収100万円の妻、10歳の子供が一人の家庭で、夫が養育費を支払う側だった場合。
こちらの票を見ると子供の年齢が0〜14歳に該当するので養育費は月4〜6万円が相場です。
同じ条件で子供が16歳だとすると養育費は6〜8万円になります。
また、15歳未満の子供が二人いた場合、養育費は6〜8万円、15歳以上が二人なら8〜10万円と金額が変わります。
家庭によって年収や子供の年齢も変わってくるので、もしよくわからないという場合は弁護士さんに相談してみるといいでしょう。
また、裁判で争った場合、基本的にこの表で決められた養育費以上の金額をもらうことはできません。
しかし、協議離婚であれば夫婦だけの話し合いで解決できますので、養育費も自由に決められます。
この表にある金額はあくまで相場であって『こうでなくてはいけない』という決まりではありません。
支払う側が月30万払うと納得したならその金額を毎月受け取ることができます。
養育費を増額する方法
一人で子供を育てることになった場合、やはりお金は多いほうがいいですよね。
では、少しでも養育費を多くもらうにはどうしたらいいでしょうか。
まず大切なのは相手の年収を把握しておくことです。
こちらが求めた養育費の額に対して相手がもっと少ない額を提示してくる可能性があります。
離婚前から相手の給料明細を集めておいたり、給料が分かる預金通帳のコピーなどがあれば相手に支払う能力があることを証明できるので希望の額がもらえる確率が高くなります。
細かく家計簿をつけておくのも大切です。
実際に何にいくら使っているのかが分かれば今後必要になるお金も計算しやすくなりますし、家計簿があればここにこれだけのお金がかかるということに信ぴょう性を持たせることができます。
また、子供が私立の学校に行ったり海外留学などをした場合、この表通りの養育費では確実に足りなくなります。
子供が幼いうちは先のことはあまり考えずに養育費を決めてしまいがちですが、将来どんな学校に行ってどんな教育を受けさせるなど明確なビジョンに基づいて交渉すると養育費の増額ができるかもしれません。
実際に離婚裁判まで持ち込まれることは少ないので、夫婦の話し合いの際には養育費を増額出来るように将来の計画を細かく立てておきましょう。
養育費が支払われない時の対処法
調停や裁判で離婚が成立した場合は、その内容を記録した調停調書や判決書が必ず残ります。
この記録があれば養育費の支払いがされなかった時に、様々な措置をとることができます。
協議離婚の場合も念のために公正証書を残しておくといいでしょう。
養育費の支払いが止まってしまったら、まずは自分で電話やメールをして請求します。
その時は『いつまでに』という期限を決めましょう。
それでもダメなら内容証明郵便で請求します。内容証明郵便は手紙の内容を郵便局が証明してくれる手紙のことです。
内容証明郵便は、通常郵便料金82円に、書留料430円、内容証明料430円(2枚目以降は1枚毎に260円追加)、配達証明料310円が加算されます。
普段、なかなか内容証明郵便が届くことはないので、これが届いたことで焦って養育費を支払う人は多く、さらに内容証明郵便を弁護士さんに依頼して作成してもらうと、さらにプレッシャーを与えることができます。
内容証明郵便でも支払いがなければ履行勧告を出して請求します。
履行勧告は裁判所から『お金を払いなさい』と電話や郵便で伝えてもらう制度で、履行勧告にも従わない場合は履行命令を出します。
履行命令は一定の期限を定めて、義務の実行するように命令する方法です。これに従わない場合は10万円以下の過料が処せられます。
履行命令を出しても養育費が支払われない場合は強制執行に移ります。
強制執行をすることで給料の差し押さえができます。
養育費と離婚理由は関係ない
最初にも書いたように養育費は離婚理由に関係なく支払われるものです。
妻の浮気が原因で離婚することになっても、夫が親権者になれるとは限りません。
子供が小さければ小さいほど母親が親権者になることが多く、夫に非がなくても子供を引き取ることはできないのです。⇒親権と離婚の原因は関係ない!精神的DV被害者に取り戻して欲しい親としての自信。
浮気をされた上に子供とまで引き離され、さらに養育費を支払うなんてなんだかやりきれませんよね。
しかし、養育費は子供が幸せな人生を送るために必要なお金であり、そのお金を払うことは親の義務です。
養育費は子供に手渡しされるわけではなく、妻に支払われるものなので腑に落ちないかもしれませんが、そのお金がなければ子供が辛い思いをします。
そうならないためにも養育費はきちんと払いましょう。
また、養育費を支払う=慰謝料が請求できないということではありません。
あなたが養育費を払うことになっても、離婚の原因が明らかに相手にあり、あなたが精神的苦痛を味わったのなら慰謝料はきちんと請求してくださいね。
まとめ
養育費は夫と妻の年収、子供の年齢や人数を考慮してこれくらいという相場がありますが、必ずしもそうでなくてはいけないという決まりはありません。
裁判を起こして離婚する際には養育費・婚姻費用算定表にある金額以上の養育費をもらうことは難しいですが、協議離婚や離婚調停の場合は夫婦で金額を決めることができます。
子供がより良い人生を歩んでいけるようにきちんと将来を見据えて金額の交渉をしましょう。
また、養育費や親権は離婚理由と関係ないため、離婚の原因が自分になくても子供と離れ離れになり、養育費を支払わなくてはいけないケースはたくさんあります。
浮気や借金などが原因の場合は相手を憎みたくもなりますが、養育費は子供のためのお金なので、親としてきちんと支払ってくださいね。
こちらの記事もご覧ください。⇒離婚理由は性格の不一致。慰謝料、養育費はいくら?浮気してるって本当!?